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日本のコメを、世界でどう成長させるか。「需要をつくる」農業という発想

コメ価格の高騰、備蓄米、需給調整。
ここ数年、日本のコメをめぐるニュースを見る機会が一気に増えました。
その中で、私はずっと疑問に感じていることがあります。

なぜコメ業界では、他の産業では当たり前に行われている「新しい市場をつくる」という発想が、もっと前面に出てこないのでしょうか。

もちろん、備蓄米や国内の需給調整は重要です。

しかし、日本の人口が減少し、国内の主食用米市場が長期的には縮小していく以上、国内だけで生産量と需要量を合わせ続けることには限界があります。

「需要に応じた生産」だけで本当に大丈夫なのか

政府は「需要に応じた生産」を掲げています。
これは当然必要な考え方です。
需要以上に作り続ければ価格が下がる。
反対に供給が不足すれば価格が上がる。
問題は、日本のコメ市場がそれほど単純ではなくなっていることです。

天候不順。
大規模水害。
地震などの災害。
在庫量。
流通の混乱。
消費者心理。

こうした要因が重なれば、わずかな需給のズレでも価格が大きく動く可能性があります。
人口が増え、国内需要そのものが拡大していた高度経済成長期とは、もう市場の構造が違います。

だから私は、

「需要に応じて生産量を調整する」だけではなく、「新しい需要そのものをつくる」ことが必要なのではないか

と考えています。

新しい需要をどこにつくるのか

その大きな候補が海外です。
国内市場が縮小するなら、新しい市場を海外につくる。
これは特別な話ではありません。

自動車。
家電。
機械。
繊維。

日本の多くの産業が、国内市場だけではなく海外市場を開拓することで成長してきました。

海外で競争するために、

生産性を上げる。
技術を磨く。
品質を高める。
コストを下げる。
物流を改善する。

そして現地の顧客が求める商品をつくる。
他の産業では当たり前に行われてきたことです。
農業も、もう少し「産業」という視点から考えてもいいのではないでしょうか。

農水省も、米輸出を何もしていないわけではない

ここは公平に見ておく必要があります。
「農水省は輸出米なんて全くやる気がない」
という声もあります。

しかし、実際には政府も米の輸出拡大に動いています。

農林水産省は、2030年に「米・パックご飯・米粉及び米粉製品」の輸出を35.3万トンまで拡大する目標を掲げています。
2026年度からは農産局に「米穀輸出促進官」を設置。
さらに、輸出事業者、生産者、JETRO、JFOODOなどが参加し、米・米加工品の海外需要を開拓する「GOHANプロジェクト」も進めています。

つまり、
「政府が何もやっていない」わけではありません。

むしろ私が重要だと思うのは、その次です。
政策として「輸出する」と掲げることと、米を本当の意味で「輸出産業」にすることは違う。
ここをどう乗り越えるかです。

「米を輸出する」から「米を輸出産業にする」へ

日本米はおいしい。
日本食は海外でも人気がある。
だから海外で売れる。

それだけでは産業にはなりません。

価格があります。
物流費があります。
保管費があります。
関税や各国の規制があります。
そして、海外には海外の消費者ニーズがあります。

だから必要なのは、
「日本で作った米を海外でどう売るか」
だけではありません。

順番を逆にして、
「海外では、どんな米が、いくらなら売れるのか」
から考える必要があります。

例えば、
寿司向け。
外食向け。
高品質な家庭用米。
パックご飯。
冷凍食品。
加工食品。
米粉。

用途によって求められる品質も価格も違います。

その市場から逆算して、

品種を決める。
栽培方法を決める。
目標単収を決める。
生産コストを決める。
精米方法を決める。
物流を設計する。
販売価格を決める。

これが本来のマーケティングだと思います。
「作ったものを売る」のではなく、「売れるものを作る」。
農業にも、この発想がもっと必要なのではないでしょうか。

輸出するなら「徹底したコストダウン」は避けられない

海外市場を本気で取りに行くなら、品質だけでなく価格競争力も必要になります。
だからこそ、生産現場の改革が重要になります。

そこで私が興味深いと感じているのが、バイオシードテクノロジーズ株式会社が取り組む
Nippon RiceLink / DDSR-MAXX®プロジェクト
です。

DDSR-MAXX®では、従来の稲作とは異なるアプローチで、省力化、節水、脱炭素などを含めた次世代の水稲栽培システムを提案しています。
そして興味深いのは、農業界だけの知識で農業を考えていないことです。
日米繊維戦争など大きな産業構造の変化を経験してきた繊維業界をはじめ、産業界や金融業界などの知見も取り込みながら、地域農業そのものを産業として組み直そうとしている。

私は、この発想が非常に重要だと思っています。

農業の問題を、農業の中だけで解決しようとしない。
他産業が経験してきた、

海外進出。
大量生産。
コスト改善。
金融。
物流。
マーケティング。

こうしたノウハウを農業に持ち込む。
それくらいの変化が必要な時期に来ているのではないでしょうか。

バイオシードテクノロジーズ株式会社
◾️バイオシードテクノロジーズ株式会社
https://bioseed.co.jp

「作る」だけではなく、「保管する・運ぶ・売る」まで

さらに、海外市場を考えるのであれば、生産だけを変えても十分ではありません。
農産物は工業製品と違い、時間とともに品質が変化します。
そこで重要になるのが、
保管と物流です。

どう作るか。
どう保管するか。
いつ売るか。
どこへ運ぶか。
どの市場で売るか。

ここまでを一つのサプライチェーンとして考える必要があります。

その観点から私が注目している技術の一つが、ZEROCO株式会社の鮮度保持技術「ZEROCO™」です。

ZEROCO™は、低温・高湿の環境を安定的に生み出すことで、食品の品質劣化を抑え、鮮度を長期間維持することを目指した技術です。

実際にZEROCOでは、保管だけでなく、生産現場、加工、物流、小売、外食まで、食のサプライチェーン全体をつなぐ構想を掲げています。
2025年には、ZEROCO™を活用して千葉県産梨を約半年間保管し、通常の収穫期とは異なる冬季にドバイへ輸出する取り組みも行われています。
これは非常に分かりやすい例だと思います。

単に、
「長く保存できる」
という話ではありません。
「いつ売るか」という選択肢を持てるようになる。
ここに大きな価値があります。

収穫したからすぐ売る。
水揚げしたからすぐ売る。

ではなく、

最も価値が出る市場、時期、場所を選んで売る。

これも立派なマーケティングです。

ZEROCO株式会社

◾️ZEROCO株式会社
https://zeroco.co.jp

日本農業に必要なのは「需要をつくる」発想ではないか

ここまで考えると、必要なものが見えてきます。

生産性向上。
低コスト化。
保管。
物流。
金融。
海外販路。
マーケティング。

これらを別々に議論するのではなく、一つにつなげることです。
政府が掲げる「需要に応じた生産」は必要です。
ただ、私はもう一歩先が必要だと思っています。

「需要に応じて作る」のではなく、
「需要をつくって、そこに合わせて作る」。

国内需要が縮小するなら、海外に市場をつくる。
海外市場を取りに行くなら、世界で競争できるコスト構造をつくる。
作ったものの価値を守るために、保管・物流技術を進化させる。
そして、生産者まで利益が戻る仕組みをつくる。

そうして初めて、日本の農業は、
「守らなければならない産業」
から、
「世界から稼げる産業」
へ変わっていくのではないでしょうか。

今までの農業を否定する必要はありません。
しかし、今までと同じやり方だけで、これからの20年を乗り切れるとも思えません。

新しい技術を試す人。
海外市場に挑戦する人。
既存の常識を疑う人。
他産業の知恵を農業に持ち込む人。

多少「変わった人」と言われるくらいでもいい。
むしろ、そういう人たちが集まるところから、新しい産業が生まれるのかもしれません。

来る者拒まず、去る者追わず。

日本のコメをどう守るか。
だけではなく、
日本のコメを、世界でどう成長させるか。
そろそろ、そちらの議論をもっと大きくしてもいいのではないでしょうか。

日本のコメを、世界で成長させる

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